サファリはじめてみました
※ 2008年4月27日バックナンバー
ヤバドゥー、ゥゥゥウ。
ヤバドゥー、ゥゥゥウウ。
そんなわけでいっこうにネームが切れず危険領域に突き進みつつあるyamotoですこんにちは。
最早天元突破以外に道はない! だから俺にあがく力とか勇気とかそんな素敵なパワーをください、神。
祈ったことねえけどな。
さてはてそんな生臭い現実はおいとくとして、今回の散財品はこちら!
ドイツはラミー社が作り上げた品、サファリの万年筆でございます。
え、万年筆なんていきなりどうしたかって?
話せば長くなるんですが……その、もう30近いでしょ、私?
未来的にダンディ目指すためには軽やかかつイカス動きで小切手にサインとかするべきじゃないかと思いまして。(超頭悪い理由)
そして手元の万年筆も「あ、今こいつハンズで買ってきたばっかなんですよ」なんていう童貞丸出し使い込み度ゼロの万年筆なんて出すわけにはいきませんよね。
そんなわけで突如として万年筆への欲望が芽生えてきたので早速、万年筆童貞を捧げるイカスパートナーを探しに夜の町へ繰り出したわけです、はい。
でもってあちこち見回してみるんですが、やっぱり万年筆はスゲエ。主に値段の桁が想定とは1桁は違うんですよね。
しかもスタイリッシュかつ書きやすそうな空気満点のブツっていうのがなかなか見つからない。さすがに万年筆は気軽に「試し書きさせてください、タダで」というわけにも行かないからこそ、慎重に選ぶ必要があるわけでして。
大きな文具売り場を探して歩くこと一時間ばかり。絶好のパートナーが見つからないと嘆く私に、そっと店員が声をかけてきました。
「こちらなど、初めての万年筆にいかがでしょうか」
そう言って見せてくれたものが、ラミーのサファリでした。
(ラミーか……そういえばスクリブルを作ったメーカーだよな)
胸のポケットをいつでも占有している「落書き」という名前のシャープペンを思い出し、考えることしばし。
(いや、しかしだ。此奴はなんかその……安っぽくないか? スクリブルもボディはプラスチックだけど、密度としちゃこいつの方が明らかに低いし。まあ、値段は4000円程度だから買えないこともないが……)
「すいません、ちょっと触らせてもらって良いですか?」
「はい、どうぞ」
案外気前のいい店員さんに内心安堵を覚えながら、サファリという名のペンを持ってみることとしました。
──軽い。
マット加工による鈍色のカラーリングが施されたボディがそう思わせるのか、見た目より明らかに軽く、まるで波の高い日の小舟を思わせる危険度を臭わせておりました。
こいつはヤバいかもしれない。久々に大はずれをひいてしまうかもしれない。そんな直感的な恐怖が胸にわき起こりました。
しかしながら、キャップを開けたとき。
その心配は杞憂であることを教えてくれました。
安っぽい合成樹脂で作られたペン軸の先。鈍色の鋼で作られた、万年筆独特の形状をしたペン先。
全体的な見た目の安っぽさとは裏腹に、その部分は鋭く鍛え上げられ、LAMYの正当な証である刻印を刻み込んだ姿でたたずんでおりました。
──馬鹿にするな。私はLAMYの子だ。
どうやらこの万年筆に対し、恥ずべき行為をしていたようです。
見ればこの万年筆、実に合理的な構造をしておりました。
ペン軸の要である指で支える部分は、3本の指で支えやすいように三角形の形状を形成し、軽いと感じたボディは、キャップを尻に填め直すことで絶妙のバランスを作り上げており、デザイン目的で開けられたと思ったボディをえぐる小さな穴は、インクの残量をはっきりとわからせるために作られたものだということを静かに語っていました。
うん、こいつはいいかもしれない。
胸の中に小さな期待が揺れ。
──結構手荒い使い方をするが、平気か?
キャップを閉めながら、心でそう問いかけました。
──万年筆を手荒に扱う馬鹿がいるか。しかし、そういう輩のために私がある。存分に使い方を覚えてゆけ。
どうやら答えは決まったようです。
「すいません、これください」
どうやら私の万年筆童貞は、サファリに捧げられたようです。
これからゆっくりと、この万年筆を覚えていこうと思います。
それでは今回はこれに……
「それで昨日から慣れない万年筆でラフを描いてたのね、主にエロ絵の」
「出やがりましたか、脳内金髪少女メリー(18禁)。春ぽくカーディガンとか羽織やがってどこの人気取りですかちきしょうが。あと、いいじゃねえか、万年筆の書き味になじむにゃやっぱ書かないといけないし」
「ええ。最低の理由でも万年筆はものを書く道具だもの。例えばそれが間違いなく犯罪的な情景を描く絵であったとしても。きっとラミーもそんな使われ方をするとは想像すらしなかったでしょうね」
「お前人のランクを下げに掛かるのそろそろやめませんか? つーか曲線とかはこういうペンにとって重要な要素なんですよ?」
「知ってるわ。ラミーの有能さもあわせてね」
「なんだ、お前知ってるン? このラミーってブランド」
「ええ。2000というシリーズが1966年に作られ、今もなおデザインを変えずに使われているという事実もね。なんでも40年後でも通じるデザインと実用性をふまえたもの、というのを目指したらしいけどどうやら成功しているようね」
「うを、そうだったのか。なんつーか名は体を表すといういい例だな。……ちなみにサファリは?」
「スクリブルというペンは貴方がよく知ってる通り、落書きよ。気取らないで済むでしょう、そのペンを持ったとき」
「うん、よく知ってる。つーかこいつ指に超なじむんだよなあ。買ってからもうすぐ2年になるけど、ポケットの中に必ず入れたい筆記用具のベストだな。ていうかお前ホントは知らないんだろう、サファリの由来」
「知りたいなら自分で調べろ、ということよ。それで、書き味はどうかしら」
「んー。そうだなあ。まだ慣れてないせいか上手には使えてないな。イメージとしちゃ、ボールペンのインクの具合が、シャープペンで書くように出る、ってとこかな。紙の滑りに若干の摩擦感がある、ってとこだ」
「まだまだエイジングが必要、ということね」
「ん? なんだよ、今日は珍しく勝手に使わないのな?」
「万年筆は使い手によって変わる道具よ。主以外が使うべきじゃないわね」
「……なんか今日はえらく大人しいですね、メリーさん。なにかあったんですか、例えばインフルエンザとか」
「有能な道具に無粋な真似をできるとでも思って?」
「む、なんですかちょっと今大人な表情しやがりましたね貴方。まあ、いいや。お前さんとしてはどうよ、この道具」
「そうね、初めてとしては実に悪くない、といったところかしら。身の丈に合わせた道具から始めるのは正しいことだから」
「ぐぐ、なんかお前に正論言われると腹立つんですが」
「ちなみに」
「なんだよ。万年筆使い慣れ的な雰囲気を持つメリーさんからのためになる講座ですか?」
「ええ。エイジングは紙ヤスリの上で書くと早く進むわよ」
「そんなん素人の俺でも嘘だとわかるわこのド畜生がぁあああっっ!!!」
というわけでつまらない嘘をかましやがったメリーへ渾身のインクボトルぶちまけアタックを食らわしつつ今回はこれにて。
早く、さらさらと小切手にサインできるナイスダンディになりたいものです、はい。