孤独の焼き肉

※ 2007年01月29日バックナンバー




俺はまるで人間火力発電機だ!


そんなわけで、孤独のグルメの台詞より抜粋となったわけですが。

金曜日の夜、お腹すいてたんで焼肉を喰いにいきました。

……1人で。



適当に目についた店に入りゃ、なんとかなるだろうと思って靴の先を向けた店のほとんどから言われた台詞。


「すいません、うち一人様はお断りしてるんですよ」


ファック! 焼肉を1人で喰う男は断ると言うのか! 軽く飯を入れて行きたい男お断りと言うのか!

おのれ、この恨みは忘れん!

そんなわけでふらふらと夜の池袋を歩く男、はぐれデザイガー路上編。
そこでふと、気になる単語を見つけて足を止めることに。


「……焼肉バイキング。そんなのもあるのか」

そのまま店内へと向かう。


結構待たされると思ったが、実際はそんなこともなく広々とした店内へと通される。肉の匂いが周囲に漂うが、小洒落た雰囲気がそれを見事に打ち消している。

「これは、不味くないか?」

そう、今まで断ってきた店は全てこんな装飾をしていたのだ。うらぶれた三十路前男は1人で来るなと言うあのオーラだ。

孤独中年除去の気配は足元まで這い上がってきていた。

「すいません、一名ですが大丈夫ですか」

つい、口をついて出てしまう。客なのだが、なにか申し訳ない気がしてきた引け目だろう。

しかし店員の応対は快く、あっさりと奥へと通された。少し、安堵した。

「焼肉と言えばホルモンだろう」

目当ての肉を回収し、席に戻る。

炭火もどきの焼き皿の上で、じわり、じわりと焼きはじめる。すぐに漂いはじめる香ばしい匂いに、舌の奥から唾液がにじみ出てくる。

「いかん。これは、あれがないと」

幸い焼けるまでは時間がある。さっと席を立ち、早足気味に目的の場所へと向かった。

「そう、これだよこれ」

真っ白い御飯と、真っ赤なキムチ。抜群のコントラストが目の前に咲く。
その目の前では早速ホルモンの火祭りが始まっていた。

派手に脂を溶かされ焼けて行く様に、心を踊らせながら早速箸を動かす。

コリコリと小気味良い食感に、じゅわと滲むホルモンの脂の旨味、ふわと包み込む御飯の有難さと、サク、としたカクテキキムチの喰いごたえ。
おそらく店漬けであろうキムチの甘味のある辛みが、華を見事に添えていた。

実に旨い。


こう旨いと、些か調子づいてしまう。

席を立つと取皿を5つほど並べ、その上にありったけの目についた肉を乗せて行く。

プレミアムカルビ、ダッカルビ、豚トロに、ロース、中落ちカルビなどなど。

レバーは些か生臭かったが、それはまあ、バイキングだからしょうがないことだ。

「あちち」

火が時折跳ね上がり、手の先まで焦がそうとしてくる。油断大敵も醍醐味ということか。


そして食はすいすいと進み、腹も八分を通り越したあたりで二膳目の大盛飯も尽き果て。ふと、周囲を見渡す余裕が出来た。


なるほど。焼肉は独りじゃ、ダメなのか。


見ればどこも相手を連れて喰っていた。



どことなくこの店内の広さは、独り身の男を浮き彫りにするようなものがあった。



満腹までは喰ったが居心地の悪さを覚え、焼き皿の火を静かに落として席をたった。



「ありがとうございました。またのご来店をー」

「どうも」


応対がどことなく優しく感じたのが唯一の救いだったか。


独り、また夜の池袋へと脚を伸ばす。



「次は、誰かと来るか」


ぽつり、降り出した雨。ふと、そう思った。



と、いうわけで焼肉屋に独りってシチュは、凄い侘びしいですね、ちくしょう!! そんなわけで今回の日記はこれにて。


孤独のグルメが気になる人は、是非一度お読み下さい。

こういうシチュが、あなたを待ってます。